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身内の方が亡くなると、故人が所有していた財産について、相続が発生します。通常、何もしなくても財産は継承されますが、個々の財産につき手続きを行わないと名義変更が自動的に行われるわけではありません。家にある家具や家電、現金などは手続きをしなくても当然大丈夫ですが、家や土地などの不動産、自動車、株や預金、保険など、相続人自らが手続きを行わないと亡くなった方の名義のままとなります。相続税の申告と違い、急ぐ必要はないかもしれませんが、速やかに行わないと時効の関係で権利を失うことにもなりかねません。
遺言書がある場合や、相続人全員で行う遺産分割協議が整った場合などは、早めに名義変更の手続きを行った方がよいでしょう。
民法では、相続人の範囲が決められています。
これにあたる人を法定相続人といいます。
@ 配偶者
被相続人(亡くなった方)の妻または夫は、つねに相続人となります。
たとえ、夫婦仲が悪く、離婚協議中で別居状態が長く続いていたとしても、まだ離婚に至っていない場合は、相続人となります。
また、どんなに長く連れ添っていても内縁の妻や夫(事実婚)は相続人とはなりません。
被相続人の子や孫(直系卑属)、父母や祖父母(直系尊属)、兄弟姉妹も相続人になることがあります。 ただし、この場合、相続人になれる順位が決められています。
◆第一順位
子や孫などの直系卑属
胎児であっても生きて生まれてきたら相続人になります。
婚外で生まれた子(被嫡出子)も認知をしていれば相続人 に なります。
養子縁組の届出を済ませている養子も相続人になります。 民法上の養子は届出をしている方すべてが相続人になります。(ただし、相続税法上は実子がいない場合は養子のうち二人までが子として税額控除の対象となります。)
養子縁組をしていない配偶者の連れ子は相続人とはなり ません。
◆第二順位
父母や祖父母などの直系尊属
養親がいる場合、養親も相続人になります。実父母、養父母の全員が生存している場合は、4人全員が相続人となります。
◆第三順位
兄弟姉妹
異父兄弟、異母兄弟も相続人に含まれます。
第一順位の相続人がいる場合は第二順位、第三順位の父母や兄弟姉妹らは相続人とはなりません。
例をあげてみます。
ケース1
亡くなた方に配偶者と子がいる。父母と兄弟姉妹もいる場合
配偶者と子のみが相続人となります。
父母や兄弟姉妹は相続人とはなりません。
ケース2
亡くなった方に配偶者と父母(祖父母)がいる。子(孫)はいない場合
配偶者と父母(祖父母)が相続人となります。
ケース3
亡くなった方に配偶者と兄弟姉妹がいる。子(孫)や父母(祖父 母)はいない場合
配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。
ケース4
亡くなった方には配偶者はおらず、子がいる。父母と兄弟姉妹もいる場合
子のみが相続人になります。
上記のように配偶者は常に相続人となり、先順位の相続人がいる場合は後順位の方は相続人とはなりません。
相続人とはならない人
上記を踏まえて相続人とはならない人をあげてみます。
・内縁(事実婚)の妻または夫
・実の子であっても認知を受けていない子ども
・被相続人に子や孫がいる場合の父母(祖父母)、兄弟姉妹
・被相続人に子はいないが、父母(祖父母)がいる場合の兄弟姉妹
・養子縁組を届けていない養子
・相続税の税額控除に限られますが、決められた人数を超えた養子は税額控除の対象にはなりません。しかし、養子が何人いても、すべての養子が相続人の地位を築きます。
・血縁関係のない同居人、知人
・義母、義父
相続権が与えられない相続人
本来なら相続人となって相続財産を受けられるはずであったのに、相続権が与えられない場合があります。
相続人の排除、相続欠格、をご参照ください。
遺言書などによって相続財産の分割方法が決められていない場合、民法はそれぞれの相続人の分配割合を定めています。
この法律で定められた相続分を法定相続分といいます。
法定相続分は相続人の構成によって変わってきます。
★配偶者と子が相続人の場合
配偶者、子が2分の1づつ相続します。子どもが数人いる場合は子の相続分2分の1を人数で割ったものが子ひとりあたりの相続分となります。
たとえば、子が3人いる場合の、子ひとりあたりの相続分は、
(子の相続分1/2) × 1/3 =1/6 となります。
★配偶者と父母が相続人の場合
配偶者が3分の2、父母が3分の1を相続します。
この場合も、父母ひとりあたりの相続分は父母の相続分3分の1を人数で割ったものとなります。
★配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。
*被相続人にとって、異父兄弟にあたる兄弟を半血兄弟といいますが、半血兄弟が相続人となる場合、半血兄弟の相続分は全血兄弟の2分の1となります
相続人となるべき人が被相続人の死亡よりも前に亡くなっていたり、なんらかの理由で相続権を失っている場合、その人の直系卑属(子や孫)が相続人となります。
これを代襲相続といいます。
この代襲相続は直系卑属と兄弟姉妹についてだけ認められています。
直系尊属(父母や祖父母)や配偶者についての代襲相続は認められていません。
また、相続放棄をした相続人にも代襲相続はありません。
なお、兄弟姉妹を代襲して相続人になる場合は、代襲相続人は兄弟姉妹の子(被相続人の甥・姪)に限られます。
被相続人の遺産が全く予想もしなかったところに承継されることを防ぐためのようです。
本来は相続人になるべき者であっても、不法な行為をしたり、犯罪などの重大な非行を犯したりした場合には、相続権をとりあげられる場合があります。
これを相続欠格と言います。
相続欠格となる事由は次のとおりです。
@ 故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するにいたらせ、またはいたらせようとして刑に処せられた者
A 被相続人が殺害されたことを知りながら、告訴・告発をしなかった者(ただし、相続人に是非の弁別がないとき、または殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であったときは除かれる)
B 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をし、これを取り消し、またはこれを変更することをさまたげた者
C 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取り消させ、またはこれを変更させた者
D 相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄または隠匿した者
相続人になるはずの人が被相続人を虐待したりして、その者に遺産を相続させたくない場合、その推定相続人から相続権をはぎ取ることができます。
これを相続人の廃除といいます。
廃除は被相続人から生前に家庭裁判所に請求して行うことができますし、遺言で廃除の意思表示をして行うこともできます。
家庭裁判所は、廃除の理由があるかどうかを審判により判断し、廃除の審判が確定すると、その時から相続権を失います。
次のような場合にその推定相続人を廃除をできます。
@ 被相続人を虐待した者
A 被相続人に重大な侮辱をあたえた者の
B その他いちじるしい非行のあった者
廃除は後に取り消すことができます。
いったん推定相続人について、廃除をしてしまっても、後日これを許してやろうと思ったときは、「廃除の取消」を行うことができます。
廃除の取消も廃除の請求と同様、家庭裁判所に請求し、審判によっておこなわれます。